坐骨(座骨)神経痛 

はじめに

坐骨神経痛の治療について当院に多数お問い合わせがあります。坐骨神経痛は不快な症状が長く続き原因疾患によっては再発も見受けられますので、体調をうまく管理し、症状を押さえ込むには患者様自身も勉強して上手に自己管理をしていくことが大切です。ここではよくある質問に対してお答えいたします。
  
1.週に何回くらいの通院が必要ですか?

当院では鍼灸と吸玉を併用して治療しますが、症状が非常に重い場合でも通院は週3回までです。毎日の通院は必要ありません。

一般論として、坐骨神経痛は毎日治療を受ければ短い期間で治るという性質の症状ではありません。鍼灸治療によって痛み自体は早く治まってきても、患部の代謝が良くなるまでには一ヶ月以上かかります。これは、日本・中国、韓国、どこの国の鍼灸治療であっても基本的に同じです。

2. 最初に治療効果を感じるまでに何日くらいかかりますか?

3回目の治療後に効果を感じる方が最も多いです。週2回のペースなら治療開始から10日後くらいです。発症から時間が経過していると、やや効果の発現が遅く
なる傾向があります。脊柱管狭窄症の手術後の再発例や、交通事故後などの場合は効果の出方に個人差があります。

3. 治るまでにどのくらいの日数かかりますか?

重症の脊柱管狭窄症による坐骨神経痛、椎間板ヘルニアが併発している重症例、高齢者の方の変形性腰椎症など、特別に重い病状を除いて、標準的な回復にかかる期間についてお答えします。

まず、鍼灸治療の回復についてご説明する前に、西洋医学的な治療(整形外科とペインクリニック)の先生方は回復期間についてどのようにお考えなのでしょうか?

当院の患者さんは、整形外科で検査を受けながら鍼灸治療を受ける方も多いのですが、そのうちの一人の患者さんが信用あるM病院の整形外科で、
「坐骨神経痛の患者さんは半年間で約70パーセントの方は痛みがなくなる」と説明を受けたそうです。

また、別の患者さんはペインクリニックの先生に、
「3ヶ月間注射して痛みが半減したら上出来です。まだまだ完治を目標にしないでください」と言われたそうです。

この2つの話は坐骨神経痛の時間的経過についてはある程度一致していて、信頼できる数字だと思います。
この二人の患者さんの症状の程度は後者の方が重いので、標準的な症状のレベルで書き直すと、
「重症でも3ヶ月で痛みが半減し、次の3ヶ月では70パーセントの方は完治する。」
「半年間経過して、まだ痛みが残る場合は次のステップ(手術など)を考える。」

ということでしょう。

ある程度は希望が持てる数字だと思いますが、患者さんは3ヶ月とか6ヶ月も待てないので、鍼灸をはじめ他にいろいろと代替医療の治療を受けているかもしれません。病院の先生のデータには代替医療の効果も含まれた数字だとも言えます。

坐骨神経痛の回復期の特徴として、治る方向に順調に進んでいても痛みがぶりかえすことがたびたびあります。治療が効いていないと誤解して中止してしまわないことが大切です。

当院では一ヶ月程度の治療期間を設定しています。その理由は、病院での治療との併用、リハビリの指導、生活上の注意、ご自分でできる治療などのアドバイスをあわせて行なっているため、治療期間の短縮に成功しているからです。

冒頭にも書きましたが、坐骨神経痛には体調管理が必要な場合があり、患者さん自身の努力も必要です。

治る早さは患者さんの生活パターンにも左右されます。仕事を持っている方のデータでは週2回の通院で症状の消失まで約一ヶ月かかります。安静にする時間が比較的確保できる方の場合、回復は早くなり3週間ほどで完治するケースはよくあります。

また、週1回の通院では回復するスピードはかなり遅くなり、6週間程度の期間が必要になります。仕事が激務で無理をしてしまうと治りかけのまま長引く場合もあります。

4. 脊柱管狭窄症の坐骨神経痛でも効果がありますか?
 
脊柱管狭窄症には馬尾型と神経根がありますが、神経根型には非常に効果的です。

また馬尾型の場合、手術をしても安静時の症状は治りにくい傾向があるので安静時にも痛みや痺れがある方は手術をする前に鍼灸治療を試す価値があります。

5. 手術後でも効果がありますか?

米国のある調査では脊柱管狭窄症で除圧手術を受けた患者を7~10年後に追跡調査したところ、1/4の患者が再手術、1/3が重度の腰痛、半数以上が歩行に困難があることが明らかになっています。脊柱管狭窄症は発症年齢が高く、術後にもさまざまな症状を抱えます。術後には患部周囲の筋肉やじん帯が非常に硬くなっている場合が多くこれを鍼灸吸玉治療で的確に緩めることにより神経への締めつけを軽減できます。

また、脊柱管狭窄症の手術は下肢(足)の痛みのために行われるものであり腰痛は抱えたままのことが多く、鍼灸治療が効果的なケースもあります。

6.坐骨神経痛についてもっとくわしく知りたい
 
坐骨神経痛というこの言葉、じつは臀部(お尻)から大腿後面にかけて鋭い痛みを自覚する症状をさす言葉であり、病名ではありません。
その原因となる疾患は腰椎椎間板ヘルニア、梨状筋症候群、変形性腰椎症、腰部脊柱管狭窄症、腰椎分離症など様々です。

坐骨神経は人体最大の末梢神経であり、第4、5腰神経と第1~3仙骨神経からなり、梨状筋というお尻の筋肉の下を通って大腿後面を下行し、膝の裏で総腓骨神経と脛骨神経に分かれます。

ですから坐骨神経痛は、神経が腰椎の隙間から出て骨盤を通り、お尻の筋肉から出る間のどこかで、圧迫や絞扼(しめつけられること)などの障害を受けたときに起こるのです。

坐骨神経痛の原因は年齢により異なりますが、若い人の場合最も多い原因疾患は

1位 腰椎椎間板ヘルニア   2.位 .梨状筋症候群  となっています。

梨状筋症候群という聞きなれない疾患は尻の深部にある梨状筋という筋肉の間で坐骨神経がしめつけられ、仕事や運動でストレスが加わり発症することが多いようです。比較的稀な疾患とされていますが、外見からでは正確な判断が難しい場合が多く実際に触診することが大切です。
 
梨状筋症候群になると、お尻の深いところが重だるくなったり、鈍痛がでたりします。
  
一方、高齢者では変形性腰椎症や腰部脊柱管狭窄症などの変形疾患に多く見られ、また帯状疱疹により坐骨神経痛を発症する場合もあります。変形性腰椎症や腰部脊柱管狭窄症などの変形疾患の場合、鍼灸治療による症状の緩和は望めますが、完治は難しいということになります。

最後に、年齢に関係なく注意の必要な疾患として脊髄腫瘍や骨盤内腫瘍などが挙げられます。こういった腫瘍性の病変で坐骨神経痛を発症する場合は、痛みが非常に強く、保存的治療で治りにくいのが特徴です。
 
当院の治療法

神経痛は直接的には血流が悪くなると起こります。ですから、坐骨神経痛の治療に吸玉(カッピング)を併用することは大変有効です。吸玉治療の実際については非公開の部分もありますので、ここでは鍼灸治療について述べます。
 
①環跳穴(股関節外側、大腿骨のでっぱり近く)と崑崙穴(外くるぶしとアキレス腱の間)を使用した通電治療
②大腰筋へのアプローチを目的とした治療(日本では北京堂式が代表的)
③仙骨孔への刺鍼治療
④大腿部、ふくらはぎの深部筋肉への通電

現在、日本で行われている坐骨神経痛の鍼灸治療としては、上記①~③までの方法が主流であり実際に高い治療効果があります。

④は①~③と併用して当院が採用している鍼灸治療法であり、慢性坐骨神経痛に効果があります。
 
どの鍼灸治療法を採用するかは、ケースバイケースですが初回の治療である程度検査・触診・テストをして決定します。その後、症状の変化を診て治療を変更していきます。